大麦若葉抽出液の脂肪細胞の分化および
脂肪滴蓄積に及ぼす抑制効果について
   
   
  現在、日本および欧米先進国では、糖尿病、高血圧、高脂血症などの症状が重複する、いわゆるメタボリックシンドロームとよばれる病態を持つ患者が増加している。メタボリックシンドロームの発症には肥満が深く関わっていると考えられている。肥満は、過食によるエネルギーの過剰摂取や運動不足による消費エネルギー低下などにより、脂肪細胞数の増加や脂肪細胞自身の肥大化が起り、脂肪が過剰に蓄積された状態をいう。脂肪を過剰に蓄積した脂肪細胞からは各種のアディポサイトカインが分泌され、それらにより、インスリン抵抗性や高血圧、高脂血症が誘導される。肥満やメタボリックシンドロームの制御のためには、脂肪細胞の分化および脂肪蓄積のメカニズムの解明が重要な課題となっている。

大麦若葉エキスの成分中には、抗高コレステロール血症作用、血糖降下作用、抗血栓作用、動脈硬化抑制作用、血漿酸化抑制作用など様々な生理作用があることが確認されている。

本研究では、大麦若葉エキスのマウス脂肪前駆細胞株3T3-L1の分化ならびに脂肪滴蓄積に及ぼす効果について検討した。
       
  実験方法  
  ■大麦若葉抽出液の調製
大麦若葉エキスの青汁粉末を蒸留水に懸濁したのち、遠心分離して得られた上清を、さらに、濾過滅菌し大麦若葉エキス水抽出液(BLE)を調製した。得られたBLE は、Amicon Ultra-15 10,000 MWCOを用いた遠心濾過によって分子量1万以上と1万以下の画分に分画した。

■脂肪細胞への分化誘導
脂肪細胞への分化誘導試験は、マウス脂肪前駆細胞株3T3-L1を用いて行った。3T3-L1を基本培地(10%FBS含有DF培地)で4日間培養後、3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX, 0.5 mM)と デキサメタゾン(DEX, 1μM)を含有する基本培地で4日間培養し、さらに、インスリン(10μg/mL)のみを含有する基本培地で4日間培養後、誘導物質を含まない基本培地に置き換えて5日間培養した。その後、細胞内に蓄積された中性脂肪をOil Red O 溶液で染色し、マイクロプレートリーダーにより492 nmにおける吸光度から、細胞内に蓄積された中性脂肪量を測定した。BLEおよび分子量で分画したBLE画分は、分化誘導剤添加以降の13日間継続して添加し、その分化抑制作用をみた。
 
       
  結果並びに考察    
 

■3T3-L1細胞の脂肪細胞への分化
3T3-L1は分化誘導剤(IBMX、DEX、 インスリン)で培養すると脂肪細胞へと分化し、細胞内に中性脂肪からなる脂肪滴を形成する(図3左)。

■BLEの脂肪細胞への分化抑制
分化誘導剤(IBMX、DEX、インスリン)による3T3-L1の分化誘導時にBLEを0.1%, 1%および3%添加したとき、脂肪細胞内の中性脂肪量がBLE の濃度依存的に約30〜50%抑制された(図1)。BLE1%を添加したときの顕微鏡写真を図3右に示す。

■分子量により分画したBLEの効果
BLE中の脂肪細胞分化を抑制する活性物質を同定するために、BLEの分子量1万以上と1万以下の画分それぞれの抑制効果をみた。その結果、いずれの画分も未分画のBLEに比較して効果は低下するものの、分化抑制効果がみられた。とくに、分子量1万以下の分画により強い活性が認められた(図2)。このことより、分化抑制作用を有する複数の因子が存在することが示唆された。

   
   
 
       
 
     
 
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